入院を毎日見ている技師が、医療保険に入っていない理由

「医療保険は入っておくのが当たり前」——そう思っていませんか。健診や検査の現場でも、「保険料は地味に痛いけど、入院が怖いからやめられない」という声をよく聞きます。

先に、私自身の話からします。私は民間の医療保険には入っていません。代わりに、生命保険(万一のとき家族にお金を残す保障)だけは外していません。限られたお金を、「起きたら家計が立ち直れないこと」から先に守りたかったからです。

私は現役の放射線技師(FP2級)として、検査台の上や病室で、入院中の患者さんと毎日顔を合わせてきました。この記事では、①なぜ私が医療保険を持たないのか、②それでも生命保険だけは外せない理由、③逆に医療保険を持っておいたほうがいい人、を順にお話しします。保険の勧誘ではなく、一人の考え方として読んでください。

この記事は、医療保険についての一般的な考え方を、一人の体験としてまとめたものです。特定の保険商品をすすめたり、加入・解約を判断するものではありません。私は診療放射線技師でありFP2級ですが、医師でも保険の販売員でもありません。必要かどうかは年齢・家族構成・貯蓄で変わります。最終的な判断は、公的な情報やご自身のライフプランをもとに、必要に応じて専門家へご相談ください。

この記事の結論(あくまで私の場合)

  • 医療保険 → 入っていない(制度と貯金で受け止める前提)
  • 生命保険(死亡保障) → 入っている(子どもがやり直せなくなるのを防ぐため)

👉 大事なのは「どちらが正解か」ではなく、「起きたら家計が壊れるのはどっちか」で選ぶことです。

目次

私は医療保険に入っていません。でも「生命保険だけ」は外せませんでした

保険料として払えるお金には、どの家庭にも上限があります。私はその限られたお金を、医療保険ではなく死亡保障のほうに寄せました。入院は貯金と制度でなんとかなるが、私が先に倒れて戻ってこないときだけは、子どもの人生がやり直せない——そう考えたからです。

「保険はとりあえず全部入っておけば安心」ではありません。むしろ、あれもこれもと入るほど保険料がかさみ、毎月の家計を圧迫します。守る順番を決めることのほうが、ずっと大事だと考えています。

医療保険を持たない理由は、”制度”を知っているから

日本の公的医療保険は、想像以上に手厚い仕組みです。窓口負担は原則3割ですが、それでも高くなったときは「高額療養費制度」が働き、ひと月の自己負担に上限がかかります。医療費が100万円かかっても、多くの人の自己負担は9万円ほどでおさまります。

仕組みの詳しい中身は、別の記事にまとめています。読むと「思ったより守られているんだな」と感じるはずです。→ 高額療養費制度とは?検査で病気が見つかっても慌てないしくみ

さらに、私のように健康保険組合に入っている会社員は、「附加給付」という上乗せがあることもあります。組合によっては、自己負担が月2万円台で頭打ちになることも。まずは自分の保険証の発行元(組合か協会けんぽか)と、その規約を確認してみてください。ここを知らずに保険へ入ると、二重に備えてしまいがちです。

【技師の本音】それでも「保険が効かないお金」は、確かにあります

とはいえ、入院で出ていくお金は治療費だけではありません。高額療養費の対象にならない実費が、現場を見ているとちゃんとあります。差額ベッド代、食事代、そして意外と知られていないのが、付き添いの交通費・パジャマ代・大人用のオムツ代です。

アル

オムツ代やパジャマ代は、入院してみて初めて「こんなのも自腹なんだ」と驚く方が多いんです。ただ金額としては数万円のことが多く、私はここは貯金で受け止める前提にしました。

この「保険が効かないお金」をどこまで深掘りするかは、別の記事で表にしてあります。→ 「医療保険はいらない」は本当?高額療養費と入院費を現役技師が解説。私の結論は、これらは数万円〜十数万円の範囲で、貯金で出せると割り切った——というものでした。

私が保険料を振り分けた基準は「起きる確率」より「ダメージの大きさ」

医療保険と生命保険の考え方|起きる確率とダメージの大きさで比べた図

では、なぜ入院より死亡のほうを優先したのか。FP2級として大事にしているのは、「起きる確率」ではなく「起きたときのダメージの大きさ」で保険を選ぶ、という考え方です。

入院は、確率は高めでも、制度と貯金でダメージが限定できます。高額療養費で上限があり、退院すればまた働いて取り戻せるからです。一方で、働き手が亡くなることは、確率は低くても、起きたら家計への打撃が計り知れません。残された家族の生活費と教育費が、まるごと消えてしまうからです。

保険は本来、「めったに起きないけれど、起きたら貯金では到底埋められないこと」に使う道具です。この物差しで見ると、私にとって優先すべきは医療保険ではなく、死亡保障のほうでした。

小さい子どもがいる私が、生命保険だけは外せない理由

私には小さい子どもがいます。もし私が突然亡くなったら、その子が独り立ちするまでの十数年分の生活費と教育費が、収入ごと消えます。これは、コツコツ貯めた貯金では到底埋めきれない金額です。

アル

治って退院できるなら、お金はまた働いて取り戻せます。でも、私がいなくなった後の生活費や学費は、子ども自身では用意できません。だから限られた保険料は、まず死亡保障に回したんです。

逆に言えば、独身の方や、パートナーに十分な収入がある方なら、死亡保障の優先度はぐっと下がります。保険の「正解」は、その人が誰を養っているかで変わる——私が死亡保障を選んだのは、あくまで守るべき子どもがいるからです。

もうひとつ怖いのは、入院そのものより「働けなくなる」こと

現場にいて思うのは、家計にこたえるのは入院中の費用より、退院した後です。体が戻りきらず、以前のように働けない期間が続くと、治療費はおさまっても収入だけが減っていきます。

会社員には「傷病手当金」があり、休んでいる間も給与の約3分の2が受け取れます。ただし満額ではなく、期間にも上限があります。入院日額より、この「働けない間の収入減」のほうが家計には効いてくる——だからこそ、医療保険の入院日額をどこまで手厚くするかは、私は優先度を下げました。

逆に、私が「医療保険を持っておいたら」と思う人

ここまで「入っていない」と書いてきましたが、誰にでも当てはまる話ではありません。現場を見てきて、この人は持っておいたほうが安心だ、と思う人が二種類います。

ひとつは、まだ貯金が少ない若い世代です。若くても入院はしますし、そのとき数十万円の現金をすぐ出せないなら、当面の支払いを保険でしのぐ意味があります。
もうひとつは、自営業・フリーランスの方。会社員と違って傷病手当金がないので、働けない間の収入の穴が大きいからです。

自分がどちら側かを、感覚ではなく数字で確かめたい方は、無料の相談窓口で一度整理してみるのも手です。「入るための場」ではなく「今の備えで足りるか確かめる場」として使えます。がんの備えを含めた考え方は、こちらにまとめています。

よくある質問

技師なのに医療保険に入っていないのは不安ではないですか?

不安がないわけではありません。ただ、高額療養費や健保組合の附加給付で治療費の上限が読めること、当面の実費は貯金で出せることを確かめたうえでの判断です。優先順位として、先に死亡保障を置いたという整理です。

生命保険と医療保険は、何がどう違うのですか?

生命保険は、亡くなったときに家族へお金を残す保障。医療保険は、入院や手術のときに本人がお金を受け取る保障です。守る相手も備える場面も違うので、「どちらを優先するか」は分けて考えるのがおすすめです。

貯金がいくらあれば医療保険はいらないと言えますか?

一律の正解はありません。目安は「当面の医療費+数か月分の生活費」を、保険料を払わずに現金で出せるかどうか。金額は家族構成や働き方で変わるので、自分の数字で見るのが確実です。

子どもが独立したら、死亡保障は減らしてもいいですか?

その考え方は理にかなっています。死亡保障が一番必要なのは、養う家族がいる期間です。子どもが独立して必要額が下がれば、保障を見直して保険料を軽くするのは自然な選択です。定期的に棚卸しするとよいでしょう。

まとめ:保険は「入る・入らない」より「守る順番」で決める

入院の現場を毎日見ている私が医療保険を持たないのは、保険が不要だからではありません。限られた保険料を、貯金では到底カバーできないこと——私の場合は子どもを残して倒れること——から先に守りたかったからです。

あなたにとっての「起きたら一番困ること」は、入院ですか、それとも収入が途切れることですか。そこが決まれば、入るべき保険はおのずと見えてきます。世間の「いる・いらない」ではなく、あなたの数字とご家族の状況で選んでください。判断に迷ったら、公的な情報を確かめ、必要に応じて専門家に相談するのが確実です。

参考にした公的機関の情報

  • 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」
  • 厚生労働省「我が国の医療保険について」

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この記事を書いた人

現役の診療放射線技師(X線CT認定技師)×FP2級。検査の現場に立って10年、毎日CT・レントゲンを担当しています。「検査する側」と「お金」の両方の視点から、医療を受けるときの不安をやさしく解説します。

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